ウクライナ侵攻で浮き彫りとなった日本のエネルギー自給率の問題。その解決のカギは、私たちの足元にありました。
実は日本には、世界3位の資源が眠っているのです。きょうは『未来をここから』プロジェクトの一環として、持続可能な社会に欠かせない地熱エネルギーを取材しました。
■ウクライナ侵攻で迫る危機 日本を救うカギ
(山口豊アナウンサー)「あちこちから蒸気が湧き出していますよね。あそこなんてすごいですね。お湯が柱状になって噴き出しています。町中がご覧のようにこの白い湯気に包まれていますね。」
ここは“地熱の里”と呼ばれる、熊本県小国町の「わいた温泉郷」。
住民たちは湧き上がる温泉や蒸気を古くから暮らしの中で利用してきました。
この自然のエネルギーを活かした地熱発電の開発も進んでいます。そこに―
(沼田昭二さん)「これが地熱発電の掘削のためのタワーです。」
まったくの異業種から地熱発電に挑戦するのは、沼田昭二さん。
実は、沼田さんは、全国で960店舗以上を展開する「業務スーパー」の創業者です。
経営を長男に引き継ぎ、2016年、地熱発電を行うための新会社を立ち上げました。
Q.このあとどのくらいの深さまで掘るんですか?
(沼田さん)「最長は1kmくらいまで。」
これが掘り当てた井戸です。地熱発電に、十分な量と温度の熱水と蒸気が確認されました。
(沼田さん)「本当にうれしかったですね。8000世帯強くらいは(電力を)賄えると思います。」
地熱発電は、地下深くから、高温の熱水と蒸気を取り出して分離。その蒸気の勢いでタービンを回して発電します。太陽光や風力と違い、天候に左右されない、純国産のクリーンエネルギーです。
Q.どうして「業務スーパー」の創業者である沼田さんが、ここで地熱事業をやっていらっしゃるんですか。
(沼田さん)「ロシアとウクライナの問題がありますけども、資源のない、日本で危険なのは食料の自給率と、エネルギーが止まることなんですね。消費者ですね。そこにリスクがある。」
日本のエネルギー自給率は11.2%、食料自給率も37%と低く、どちらも海外からの輸入に依存しています。沼田さんは、地熱発電で、この2つのリスクを解決したいと言います。
Q.シジミですね。結構育っていますね。
シジミに、東南アジア原産のオニテナガエビ。南国の果物などを熱水で育てるための研究が進められています。
(沼田さん)「“熱水”は地球の恵みなので、それでできるだけ食料自給率を上げたい。ここの面積の数百倍のもの(養殖・栽培)が簡単にできます。」
■解決策は「業務スーパー」の経営哲学
沼田さんが手がける、地熱発電所は再来年4月に運転開始の予定です。
(小国町 渡邊誠次町長)「エネルギーと食料と、しっかりと自立していくような、こういう壮大な計画もお持ちだということでございますので、非常にありがたいと思っております。」
火山国である日本には、世界で3位という莫大な地熱資源が眠っています。ただ実際の導入量は10位で、開発が進んでいないのが現状です。
(沼田さん)「5本、10本掘っても、1本ぐらいしか当たらない。(失敗すると)数千万円なり、数億円を全部一括“損金処理”しないといけない。誰かがそのリスクを負っても、数十年、数百年後のことを考えて、この資源の開発はすべきと考えています。」
どう地熱開発を前に進めていくのか。沼田さんの解決策は、「必要なものは自分たちでつくる」という「業務スーパー」の経営哲学にありました。
(沼田さん)「このアジフライも、白身フライも、うずら卵もすべて、自社開発商品になっております。」
実は、国内に25カ所もの工場を持ち、自分たちで商品を製造して、コストをカット。
さらに売り場の冷凍ケースまで自分たちで設計。出荷された商品が、ひと箱そのまま入り、何度も補充する手間がないよう工夫されています。
(沼田さん)「地熱もまったく一緒ですね。この設計と同じように見直しさせていただいて、今機械もすべてつくらさせていただいて、」
北の大地、北海道では沼田さんの秘密兵器がすでに稼働していました。
(沼田さん)「当社独自で自分で走りまして、自分でアームを上げて、自分で掘る機械を開発しました。」
この機械なら巨大なやぐらを組まずに掘削することが可能で、調査時間の短縮につながると言います。
(沼田さん)「狭い場所でも下に少しガタガタでも全部掘削の場所まで行けます。着くともうそのまま数時間後には掘削できます。」
調査費用もおよそ2億円から、6000万円に減らすことができたと言います。
さらに別の課題。掘削技術者の高齢化による、人材不足に対しては―
(山口豊アナウンサー)「沼田さんは、地熱に関する学校までつくり上げました。それがこちら、北海道白糠町にあります、日本初となる掘削に関する技術を学べる専門学校なんです。」
実際に使われていた機材や、掘削シミュレーターが導入され、地熱開発の専門家らが講師を務めます。
(沼田さん)「この技術はあと10年すればまったくなくなってしまうので、必ずこれは日本になくてはいけないと。勇気を持って私は全部つくっていこうと。」
沼田さんのもとには、すでに全国20市町村から地熱開発の依頼が寄せられていると言います。
「この地下に世界で3番目の資源があるのは事実なんです。それがいろいろな問題があって、(開発が)できていないのも事実です。業務スーパーと同じように、何とか解決して、食料自給率を上げて、純国産エネルギーを上げたいと、ロシア、ウクライナの問題もありまして、私はもう待ったなしだと考えています。」
4月10日『サンデーステーション』より
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