能登半島地震は、石川県の漁業にも大きな影響を与えています。輪島市の鹿磯(かいそ)漁港で行われた、専門家の現地調査に同行しました。
金沢大学 地域創造学類の青木賢人准教授:
「僕らもほとんど目にすることのない地殻変動量なので。白いところが元々水面だった高さ。こういう仕事をしていますけど見たことがない風景です。正直言葉がない」
今回の地震で、能登半島の北岸およそ90キロで地盤が隆起し、輪島市の鹿磯漁港では、港全体が干上がりました。
青木准教授:
「覗くだけでもすさまじい」
稲垣真一アナウンサー:
「ここは今、海の底ですよね」
青木准教授:
「はい、そうです。」
稲垣アナウンサー:
「海水がここにきていて、つまりこの陸地自体は全部上に上がっているんですよね」
青木准教授:
「はい、海底も含めて一緒に全部地面が上がってきた。なので船が干上がった、打ち上げられた状態。元々は停泊していた船なんですけど、船が沈んだんじゃなくて、地面が上がってきて座礁している」
青木准教授は磯に降りて、隆起量を調べました。
稲垣アナウンサー:
「ここが海底だったという所に今私たちが立っていること自体が、おおよそ信じられない」
青木准教授:
「僕も信じられないです」
隆起の高さを計測すると…。
青木准教授:
「ここまで行くと4m30~40cmというくらいでしょうか、この分が地面が隆起した部分になります。元々は色が変わったところまで海があった」
稲垣アナウンサー:
「どれぐらいの速度で上がったんですか」
青木准教授:
「これは地震動が起こっている間に地殻変動が起きていますので、基本的には地震が起こっていた1分間」
稲垣アナウンサー:
「たった1分で地面が4m一気に上がったという事になるんですね」
青木准教授:
「そうですね。この場所だけがドーンと上がったわけではなくてこの辺り一帯が全部4m上がっていくということになるので、当時そこにいらっしゃった方は自分の住んでいる土地が4m持ち上がったという感覚は多分ほとんど持てないだろうと思います。『海が下がっていった』という感覚はあるかもしれませんけども。結果的に『地面が隆起した高さの分だけ津波の影響が少なくなった』ということはあるだろうと理解しています」
今の能登半島ができた理由は、こういった地震の積み重ねと指摘する研究者もいます。今回の地震は3000年から4000年に1回の規模だといいます。
青木准教授:
「長期的にみると能登半島はこういう地震活動を繰り返しながら、たくさんの海岸段丘を作ってちょっとずつちょっとずつ高くなってきた土地。今回だけが特別なことなのではなくて、長い能登の自然の営みの一つを見せられているんだという理解はしないといけないですね」
漁業に欠かせない港ですが、青木准教授は復興の難しさを指摘します。
青木准教授:
「東日本大震災の時との大きな違いというのは、ここは『地面が隆起した』という事なんです。東日本(大震災)の場合は港は沈降しましたので、港の上物の整備さえしっかりすれば、元々あった港に(船が)入ってくるという事に問題はなかったんですけど、ここは地面が干上がってしまいましたので、今ここは船が入れない状態なんですね。ここに船を入れようと思うと、下の岩盤を砕いて掘ってここまで船が入ってこられるようにするとともに、4m上がってしまった施設を4m下げないと、水揚げができないという状態になります。かなり時間がかかるとともに、膨大な予算、コストがかかるということになります。ですので、東日本(大震災)時の水産復興以上に大変な作業が、これから石川県を待っているんだという風に思っています」