長引く避難で被災者の人々の生活は過酷さを増しています。番組は、人がひしめき合う避難所を離れ、壊れた自宅で暮らす家族を取材しました。支援物資がもらえないと困惑の声を上げています。
■自衛隊の入浴支援「涙が出た」
能登半島の被災地では停電が続いています。
暗い道を抜けた先に待っていたのは、お風呂です。
珠洲市上戸町で入浴した男性(29)
「自衛隊の方々が作ってくれたお風呂を見た時は本当に涙が出たというかすごくうれしかったですね」
珠洲市内でも始まった自衛隊の入浴支援は、9日時点で10カ所ほどに広がりました。
珠洲市上戸町で入浴した男性
「他の方々も皆幸せそうな顔をしていて、そこがすごく印象的で安堵(あんど)したというか、ちょっとだけ地震を忘れることができたのかな」
■津波で被害 三崎町で“お風呂”作る
今回の震災はいまだ、被害の全容が見えてきません。
蟹谷博樹さん(60)
「(Q.被害の全容は把握できていない?)分からないよ。テレビもねえ、どの地区がどうなったか分からんよ。新聞も来ないし」
こう話すのは、同じ珠洲市で自衛隊の入浴支援が始まったエリアから13キロほど離れた、三崎町に住む蟹谷さんです。
能登半島の先端にある三崎町は、津波で大きな被害を受けました。
蟹谷さん
「水もない電気もない。風呂はどうする?着替えもない。(服を)一回も着替えてないし、洗濯もできないし、めちゃくちゃですよ」
支援の手が届かないなか、蟹谷さんたちはある行動に出ました。
重機が四角い物体を持ち上げます。
蟹谷さん
「(Q.クレーンを使って何を持ち上げている?)あれはユニットバス。つぶれたお家からユニットバスを持ってくる」
避難所に集まった住民と協力し、がれきの中からユニットバスを集め、お風呂を作ることにしたのです。
蟹谷さん
「(Q.あすやあさってにすぐできる状況?)まだまだ今組み立てただけだから配管もしてないし」
■避難所生活も…家族がバラバラに
被災した人が直面する問題は、地域や家族によって様々です。
9日、志賀町富来は冷たい雨と非常に強い風に見舞われました。この辺りの地域も非常に甚大な被害が出ています。
富来地区は志賀町の北部にあり、今も断水が続いています。
多くの住宅には、倒壊の危険を知らせる赤い紙が貼られていました。
自宅で取材に応じてくれたのは28歳の女性、合わせて9人の大家族です。
被災後、避難所生活が続いていますが、1歳9カ月の小さな男の子がいるため負担が大きくなっています。
富来在住の女性
「夜泣いてしまったりすると、おじいちゃんおばあちゃんが嫌そうな顔をされたりするので、集団生活なので迷惑掛けてもいけないなと」
一家は、昼間は避難所で過ごし夜間は大人が交代しながら男の子と避難所の外に出て、車の中で面倒をみるなど周りに気遣ってきました。しかし…。
富来在住の女性
「ガソリンももったいないのでエンジンかけずにやったんで、余計に寒かっただろうなって。エコノミー症候群とかに気をつけてくださいというアナウンスも流れてたんで、いったん家に帰って寝たほうがいいんじゃないかなと思って」
一家は高齢の祖母だけを避難所に残し、自宅に戻ることに。バラバラに暮らすことを余儀なくされたのです。
■避難所出たら…「支援物資もらえず」
ところが、家に帰ってみると町からある紙が。
富来在住の女性
「(Q.基礎に部分的なひびわれ?)瓦にずれなんで、風が吹くとバラバラバラバラって落ちてきたりするのに注意なのかなって」
それでも、自宅で生活する決断をしましたが、思わぬ事態に直面しました。
富来在住の女性
「一時帰宅したら支援物資をいただけるんですかって聞いたら、避難所にいない方には支援物資はお渡しできないですっていうふうに言われてしまったんで」
支援物資の支給対象は、避難所で生活している人に限られるというのです。
富来在住の女性
「スーパーは開いてるんですけど、物流が全部ストップしてしまってるので、そこの在庫がなくなってしまったらもう手に入らなくなるので。食料が9人分もいると、皆仕事も全部ストップしてしまってるので生活が厳しくなってきます」
一体いつまで不安を抱えながら生活していかなければならないのか。それでも、生まれ育った富来は、海から見える景色にお祭りなど、離れがたい町だといいます。
富来在住の女性
「(Q.強い揺れがあった富来ですがこれからも?)います富来に。富来にいます、ずっと」
「(Q.富来が好きって思い?)富来が好きです。何が好きって言われると分かんないんですけど、やっぱりどれだけ崩れてもこうやって景色とか見れば自分の生まれ育った場所と思うんで。富来が好きなんで、富来にはいたいなと思います」
(「グッド!モーニング」2024年1月10日放送分より)
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