羽田空港で日本航空と海上保安庁の飛行機が衝突、炎上した事故で、日本航空機内の様子が明らかになりました。脱出までの18分間を検証します。
■乗客「衝撃の後、エンジンに火が…」
暗闇に赤々と立ち上る激しい炎。もうもうとした煙とともに機体をのみ込みます。
乗客
「炎めっちゃ見えました。やばい絶対死ぬと思いました。受け入れきれなくて、整理できなくて、頭抱えているので精一杯という感じでした。何もできませんでした」
乗客
「着陸の本当に寸前のところで、一回大きな衝撃がドンときて。その瞬間にはもう自分の横のエンジン左右が火が出ていた」
乗客
「ただ事じゃないなと思ったので、一生懸命口ふさぐしかなかった。(機内は)煙がいっぱいで、息できないくらいになっちゃって」
日本航空516便と海上保安庁機が衝突して5人が死亡した事故。帰省客でごった返す空港は、大混乱に陥りました。
欠航となった人
「(Q.どこまで行く予定だった?)沖縄まで。(飛行機に)乗ってて、あと少しで出発という時に(事故が)あったみたいで。3時間くらい飛行機に閉じ込められてました」
■全便欠航で…振り替え待ちの長い列
羽田空港は衝突したC滑走路を閉鎖し、全便を欠航。羽田空港の出発ロビーでは振り替えを待つ人で長い列ができました。
振り替えの手続きに並ぶ人
「羽田から北九州に帰る予定で。滑走路が止まってる状況で、乗れませんでした」
振り替えの手続きに並ぶ人
「(Q.どれくらい待っている?)2時間以上ですね」
「(Q.どこまで行く予定?)松山まで。正月にこちらの娘のところに飲み食いしに来たとこなんですけど」
Uターンラッシュのピークを迎えた3日もおよそ150便が欠航し、3万人以上に影響が出ました。
沖縄に帰る人
「(Q.何時間ぐらい待ってる?)一日丸々経ってるよね。(1月2日、3日合わせて)24時間」
「(Q.お子さんはどうですか?)疲れているとは思うが、それなりに今は過ごせています」
長崎に帰る人
「きついですね。もう帰らないと(会社の人に)怒られる」
■“奇跡の脱出劇”に海外メディアも…
今回、JAL機と衝突した海上保安庁機は、震度7の地震が起きた能登半島へ水や毛布、食料などの支援物資を届けに向かう途中でした。
衝突した瞬間から大きな炎を上げる日本航空の機体。乗客も死を覚悟したといいます。
“奇跡の脱出劇”に海外メディアも「全員生き残ったのは奇跡」「模範的な避難だった」などと報じています。
アメリカ・ニューヨークタイムズは、「全員が無事に脱出するのは不可能に思えた」と報じました。
■緊迫の18分間で全員脱出
脱出までの“緊迫の18分間”に何が起きていたのか。機内で撮影された映像から全容が少しずつ見えてきました。
2日午後5時47分ごろ、JAL機が着陸し、衝突してからおよそ1分…。
動画撮影した家族
「燃えてる、燃えてる。なんか焦げ臭い」
「何これ、火出てる、火出てる」
「燃えてる臭いがする」
座席のすぐ横で、轟音(ごうおん)とともに燃える翼。エンジンの付近が赤く光ります。
動画撮影した家族
「ドーンと着陸した瞬間に前のモニター画面がぱっと明るくなって。横から熱気を感じたのを見たら、火が出ていた」
動画を撮影し始めて30秒ほどすると機体が炎を上げながら停止します。そして、衝突から4分後…。
客室乗務員
「鼻と口を押さえて、姿勢を低くしてください」
「荷物を取り出さないでください」
窓を覆いつくす赤い炎。機内では、子どもの泣き声とともに客室乗務員が指示をする大きな声が響き渡ります。乗客たちは座席で姿勢を低くし、口元を手で押さえている人もいます。
ほぼ満席の機内ですが、炎に包まれている状況でも大きな混乱は起きていません。
動画撮影した家族
「自分がいたのが右の羽側だったので、そっち側は一応エンジンの(火が)上がっているなというのは見えたが。ただ、反対側を見ると窓の外にも明らかにオレンジ色の火が上がっているのが見えてたので。そっち側がだいぶ激しく燃えてた」
「急いで逃げなきゃいけない場面なんで、急がせつつも、ある程度冷静ではあったと思う」
衝突から8分後の午後5時55分、撮影者は脱出しました。
ポンプ車が消火活動をするなか、次々とスライドを下りていく乗客。下りた付近には、乗客が立ち上がるのを補助している人たちもいます。中には、信じられないといった様子で振り返る人もいました。
動画撮影した家族
「軽率には言えないですけど、自分たちがこうやって助かっているのも運が良かったんだなと思っています」
機長がすべての座席を確認し、地上に下り立ったのは衝突から18分後の午後6時5分でした。
脱出完了してすぐ2分後には、機内からも炎が上がりました。30分後には、機体全体が激しい炎に包まれます。
■CAの判断で“安全なドアだけ”開ける
奇跡とも言える、緊迫の脱出劇。日本航空で客室乗務員として10年以上勤務していた香山万由理さんは、乗客の“パニックコントロール”が、うまくいったことが死者を出さなかったカギだといいます。
ファーストクラスアカデミー代表理事 元JAL客室乗務員 香山万由理さん
「客室乗務員はサービス業として、ホスピタリティーとしては、感じがよくとか優しくというように教育を受けております。敬語を使って丁寧にサービスをしているのですが、保安要員になった時には敬語などは使わなくてよい」
「(事故当時)機内アナウンスのようなものも使えなかったですし、おそらくメガホンも使っていないのではないかと。地声で『大丈夫、落ち着いて』と太く大きな声で言う。それがお客様を落ち着かせる一つの言葉掛けになったのではないかと考えられます」
実際、機内の映像を見ると、客室乗務員の“大きな声”の指示もあり、パニックに陥っていなかった様子がうかがえます。
衝突時、機内のインターホンが使えなくなり、機長と連絡が取れなくなったため、客室乗務員は「自らの判断」で8カ所あるドアのうち機体の中でも安全な前方後方3カ所のドアだけを開け、客を脱出させました。
香山さん
「脱出訓練は一番大変で、一番重要なことだと考えております。お客様を助けるために私たち自身ができなかったら、誰もドアの開け方も分かりませんし。脱出の方法も分からないので、その訓練だけは徹底的にやっております」
そして、脱出の際には…。
香山さん
「怖くてちゅうちょする方もいらっしゃるんですね。その場合であっても、命第一優先ですので、そこは『降りてください』と言って、ぐっと腰を押して、降りるように誘導はしています」
1、2秒に1人という“ハイペース”で、脱出スライドに飛び込んでいく乗客。脱出の妨げになるため、「荷物を持っていかないように」という指示に従い、上着を着ていない乗客の姿も目立ちました。
■管制との交信記録を公開
着陸機が降り立つ滑走路上に、離陸機が進入するというあってはならない状況。
運輸安全委員会 事故調査官
「ボイスレコーダーとフライトレコーダーの回収ができた。本当に使えるデータなのかは、これから作業する」
日本航空関係者によると、パイロットらは「管制からの着陸許可を復唱した後に、着陸操作を実施した」と話しているといいます。
3日に公開された交信記録によって、その際の詳細なやり取りが明らかになりました。
3日公開された交信記録(原文英語)
管制官
「JAL(ジャパンエア)516 滑走路34R(C滑走路)に進入を継続してください。出発機があります」
JAL516便
「JAL516 滑走路34Rに進入を継続します」
管制官
「JAL516 滑走路34R(C滑走路)着陸支障なし」
JAL516便
「滑走路34R 着陸支障なし」
日本航空の機体が管制官の指示を復唱し、確認しながら着陸に入っていることが分かります。海上保安庁機への指示は…。
3日公開された交信記録(原文英語)
管制官
「(海保機へ)C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください」
海上保安庁機
「滑走路停止位置C5に向かいます」
交信記録では、待機位置への移動を指示されていて、その後、事故が起きるまで管制とのやり取りはありませんでした。
しかし、事故後に海保の機長は「管制から滑走路への進入許可を受けたうえで進入した」と説明。交信記録と機長の説明が食い違っています。
国の運輸安全委員会が経緯を調べるとともに、警視庁は特別捜査本部を設置し、業務上過失致死傷の疑いで調べる方針です。
日本航空は4日も63便を欠航し、1万2000人以上に影響が出る見込みです。
(「グッド!モーニング」2024年1月4日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp