香港の民主化運動でリーダー的な役割を果たした周庭さん。その後､刑務所に収監され、沈黙していた彼女に話を聞きました。
■「香港は怖い」「懺悔書も・・・」周庭さんの思い
2014年、香港で民主化を求めた「雨傘運動」。若き民主活動家・周庭さんは、このとき、抗議の声を上げていました。それがいま…
周庭さん:
「香港は自分の家なんですけど、香港のことも大好きなんだけど、怖い、恐怖です。私にとってだけではなく、香港社会自体が恐怖だらけの社会になってしまって」
12月8日、番組の取材に応じた周庭さん。27歳になったいま、カナダに滞在し、香港から事実上、亡命したことを明らかにしたのです。
一国二制度のもと、言論の自由などが認められていた香港。運動で、彼女はリーダー的な役割を果たしていました。
ところが2020年、違法な集会を扇動したとして逮捕され、禁錮10か月の実刑判決を受け、翌年、出所。
その後、留学を希望しますが、パスポートは当局に取り上げられ、その返却と引き替えに、様々な条件が付けられます。
周庭さん:
「6時間か7時間くらい警察署に行ってずっと尋問、いろいろ聞かれて、懺悔書で、『私は今までの民主化運動の参加に後悔していて、もう参加しません』 そういうのを書かされました」
■「愛国者にならないといけない？」香港での生活とは
中でもつらかったのが、警察が同行する形で、中国本土での愛国主義の展覧会に行ったことだったといいます。
周庭さん:
「中国共産党と政府が中国の経済発展のために何をしたとか、中国はどう素晴らしい国なのかという展覧会だったので。『愛国者にならなければいけない、ならないと自由を与えない』という脅迫の意味だと思う」
2023年9月、ようやくカナダに留学できた周庭さん。ただ3か月に1回香港当局への出頭が求められ、それが今月末に迫っていました。そこで香港に戻らないことを決意。しかし今も、不安は拭えません。
周庭さん:
「中国が各国に秘密警察、海外秘密警察とかそういうものがいるという報道も読んだので、自分の身の安全もすごく不安というか心配」
こうした周庭さんに対し、香港政府トップは…
李家超 行政長官（5日）:
「みずから出頭しないかぎり、一生、逃亡者として追われることになる」
■国安法で中国化が加速 絵本「中国はオオカミ?」で逮捕
周庭さんが戻らないと決めた香港。とりわけ、2020年の、反政府デモなどを取り締まる「国家安全維持法」施行以降、大きく様変わりします。
2021年、子ども向け絵本を発行した男女5人が逮捕。
その内容は、羊たちが平和に暮らしていた村に、ある日、悪いオオカミがやってきますが、羊たちが団結して立ち向かう物語。
ところが、当局はこれが「中国をオオカミになぞらえ、中国政府や香港政府を批判している」としたのです。
香港警察の会見:
「この絵本は政府と司法行政に対する憎しみを生み、暴力を煽る」
■消されゆく天安門の記憶 香港で次々撤去
さらに香港の大学にあった自由の象徴も・・・
香港では近年、天安門事件の犠牲者を追悼する塔や像が次々撤去されるなど、その歴史を覆い隠そうとしています。
また国家の安全に関わるとして逮捕された者は、この3年で250人を超え、政府批判を辞さなかったメディアは立て続けに沈黙を余儀なくされます。さらに当局の監視はネットにも。
日本に留学していた23歳の学生が、ネット上に「香港独立」を主張する投稿をしたとして、3月、一時香港に戻った際、逮捕。国家安全維持法が日本での言動に適用された初めての例とみられ、不安が広がりました。
■「権利、自由は当たり前とは思わないで」周庭さんの思い
香港返還から26年。「50年は変わらない」とされ、高度な自治を保障した香港の「一国二制度」について、専門家は…
東京大学大学院・阿古智子 教授:
「もう一国二制度どころじゃない。（海外への）移住者、逃亡者もかなりの数出ているんじゃないかと。何万、何十万と。あとは経済的に不安定で中国国内の不満がかなり高まっている。そうすると強く打ち出す方が（中国政府は）国民から支持される。中国共産党の統治の姿勢が変わらなければ、香港はどんどん変わっていく」
そうした中、今回、周庭さんは2024年1月の台湾総統選挙に触れつつ、「民主主義の大切さ」を語りました。
周庭さん:
「台湾は香港と違って民主的な選挙制度があって、市民の言論の自由、集会の自由、そういう自由や権利も保障されている。多分日本人にとって遠い話になると思うけど、権利や民主的な制度、自由も当たり前ではない。自分がいま持っている自由や権利を大切にすることが大事だと思う」
（「サンデーモーニング」2023年12月10日放送より）
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