羽田空港で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突した事故。海上保安庁の航空機の機長が滑走路への進入許可を受けたと説明していることが分かった。しかし、3日に国土交通省が公開した交信記録には、進入を許可した記録はなかったという。
■乗客乗員379人…子どもの泣き声や叫び声
煙が入り込み、乗客の叫び声が響き渡る機内。窓の外には、炎がすぐそこまで迫っているのが確認できる。
2日午後6時前に撮影された映像。滑走路が突然、赤く光った。
新千歳空港から羽田空港に向かう日本航空機が、滑走路で海上保安庁の機体と衝突。機体は炎上し、煙も上がっている。
その直後に撮影された写真。機体の前方には衝突したとみられる跡がある。この時、機内には乗客乗員379人が乗っていた。
乗客の子ども
「早く出してください」
客室乗務員
「鼻と口を覆って、姿勢を低くしてください」
乗客の子ども
「開けてください」
客室乗務員
「鼻と口を覆い、姿勢を低くしてください」
子どもの泣き声や叫び声、そして客室乗務員の指示を出す声が入り混じり、機内は騒然としている。
床にしゃがんでいる女性。さらに、その奥では座席に座っている乗客の男性が屈みながら、布のようなもので口と鼻を覆っている。
乗客の子ども
「開けてくださいよ」
客室乗務員
「鼻と口を覆い、姿勢を低くしてください」
客室乗務員は乗客に指示を送りながら懐中電灯を取り出し、暗い機内の中を照らしながら移動していく。その先には赤ちゃんを抱っこしている女性の姿があった。赤ちゃんは泣きじゃくっている。
すると、客室乗務員が手を伸ばして救急箱を取り出した。映像はここで終わる。
■乗客の証言…“異様な音” 翼の下から炎
航空機は瞬く間に炎に包まれた。消火活動が行なわれるも、火の手は収まることなく、機体を焼き尽くす。
消防隊が数人、近くにいるが、その後ろで火の粉のようなものが落ちてきているのも確認できる。懸命な消火活動が続けられるも、なかなか火の手は収まらない。
火が消し止められたのは、3日午前0時9分、日付が変わってからのことだった。翼部分以外は黒焦げとなり、原型をとどめないほど機体は損傷している。
JALの機体に乗っていた乗客乗員は、けが人は出たものの、犠牲者はいなかった。
事故機の乗客
「何が起きたか分からなかった。普通に着陸をした後の衝撃が、まずタイヤがついた後に“ダン”と音がして、それと同時に右手を見たら、火が噴いていたという状況」
多くの乗客が“異様な音”を耳にしていた。
事故機の乗客
「着陸してすぐに変な音がして、前につんのめるような感じになって」
事故機の乗客
「もうすぐ着くなって思った時に、すごいドカンと大きい音と、ガクンと前に倒れそうな揺れと」
乗客乗員379人を乗せた日本航空機は2日午後5時47分、羽田空港に着陸した直後、滑走路上にいた海上保安庁の飛行機と衝突。その後、日航機は1キロほど走行し停止。すぐに火の手が上がった。
事故機の乗客
「(Q.どう燃えていた?)こんな感じですね」
その時に撮影された写真を見ると、翼の下から炎が確認できる。
事故機の乗客
「燃えているぞーと叫ばれて。えって見たら、エンジンから火が出ていて」
事故機の乗客
「わりと燃えているのが分かって、ちょっと助からないかなと思いながら、飛行機の中にいました」
■「早く外出せ」パニックも…CAが冷静対応
事故機の乗客
「子どもがずっと怖がったので。震えてね、逃げ出して」
事故機の乗客
「少しパニックになられている方も多くて」
事故機の乗客
「『早く外出せ』ってめっちゃ騒いでて、めっちゃ怖かったですね」
窓の外には火の手が、そして機内にも煙が入ってきて、乗客らがパニック状態になるなか、客室乗務員は冷静に対応していた。
事故機の乗客
「『早く脱出の所を開けろよ』と叫ばれたら、CAさんが後ろに下がってきて、『どのエンジンが燃えていますか?』っていう確認をCAさん同士でやり始めて」
事故機の乗客
「CAさんが誘導して、前から順番に降りて行って、手荷物は持つなで。あとはスライダーみたいなので、みんな降りて行った。問題なく降りていた」
日本航空によると、機内のアナウンスシステムが作動せず、客室乗務員はメガホンなどで避難誘導を行い、着陸から18分後の18時5分に、乗客乗員379人全員が機内から脱出することができた。
■海保機5人死亡 機長は自力脱出も重傷
機内で煙を吸ったり、脱出時に転倒したなどで18人がけがをしたが、乗客乗員が全員無事に脱出できたことについて、海外メディアは「奇跡」などと報じた。
イギリスの新聞でも、羽田の事故が写真付きで大きく扱われた。そして、日航機の乗客乗員に犠牲者が出なかったことについて「奇跡」と報じた。
日本航空の避難誘導などの訓練の様子を見ると、大声で誘導しながら、実際に脱出用スライドを滑っていく。こうした訓練を毎年、丸一日かけて行なっているという。
一方、衝突した海上保安庁の航空機は5人が死亡し、機長は自力で脱出したものの重傷だという。海上保安庁の機体は、跡形もなく砕け散っていた。
海上保安庁 瀬口良夫次長
「かけがえのない職員の命を失ってしまったことは、痛恨の極みであります」
隊員たちは能登半島地震の被災地へ支援物資を運搬するために、離陸を待っているところだったという。
■100便以上が欠航 2万人以上に影響
事故以降、羽田空港を発着するすべての国内線が欠航となり、羽田に到着する予定だった飛行機は、成田など他の空港へと行先が変更になった。
羽田行きの便を予約していた人
「あしたの振り替え便が早いので、ホテルも取れなかったですし、もうここ(空港)で」
北海道・新千歳空港では、およそ250人が空港で一夜を過ごしたという。また、事故から一夜明けた3日も、振り替え便の手続きなどで長い列ができていた。
北海道へ帰る人
「きのうの飛行機で帰る予定だったが、全部欠航になってしまったので。きょうに振り替えてというところだが、カウンターもだいぶ混み合っているので」
徳島に帰る人
「あすから仕事なので、きょう帰れないとヤバいなと…」
正月のUターンラッシュを直撃した事故の影響で、日本航空と全日空は3日までで100便以上が欠航となり、2万人以上に影響が出ている。
日本航空は、4日も欠航になる便が63便あり、およそ1万2000人に影響が出るとしている。
■海保機には「滑走路進入の許可なし」
事故直前のやり取りについて、認識に食い違いが生じていた。
JAL常務執行役員 青木紀将総務本部長
「着陸許可が出ていたと認識しています」
日航機のパイロットらは、管制からの着陸許可を復唱し、着陸操作を実施したと話す。しかし、海上保安庁の航空機の機長も、管制から「滑走路への進入許可を受けた」と説明している。
日本航空側は着陸に向け、海上保安庁側は離陸に向け、ともに管制から許可を得て、滑走路に入ったと主張する。
そんななか、3日夕方、国土交通省は事故直前の管制の交信内容を公開した。
東京タワー(管制塔)
「JAL516、滑走路34R着陸支障なし」
JAL516(衝突した日航機)
「滑走路34R着陸支障なし、JAL516」
一方、海上保安庁側には…。
東京タワー(管制塔)
「1番目、C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください」
JA722A(衝突した海保機)
「滑走路停止位置C5に向かいます。1番目ありがとう」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年1月4日放送分より)
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