日本航空と海上保安庁の航空機が衝突した事故。脱出までの18分間に何が起きていたのか、乗客の証言から緊迫した機内の様子が分かってきました。
■脱出まで18分 乗客語る“緊迫”
エンジンを包み込む炎。
乗っていたテレビ朝日関係者
「シューッて降りていって、ドカン!ってなって」
乗客
「普通の着陸とは全然違う。何かが当たったような」
機内で撮影された映像。そして、脱出するまでの緊迫の18分について乗客が語りました。
日本航空516便と海上保安庁の航空機が衝突したのは2日午後5時47分。直後に乗客が異変を察知します。
乗客
「燃えてる、燃えてる。何か焦げ臭い」
翼の中に見える小さな赤い炎。飛行機は、まだ滑走路を走っています。衝突から3分後には飛行機は停止していて、エンジンも翼も燃え上がっています。
乗客
「左翼のところがボロボロになっていて、しばらくしてから燃え出したということで」
飛行機にはテレビ朝日の関係者も乗り合わせていました。乗っていたのは右側前方。
乗っていたテレビ朝日関係者
「何度も何度も繰り返していたのは、CA(客室乗務員)さんが『落ち着いて下さい』『大丈夫です』って。シューターとかの準備とか色々あったんだと思うんですけど、『なんで?なんで?』って、すごい怒ってる声も後ろからしていました」
実際、窓の外に炎が迫るなか、冷静に呼び掛ける客室乗務員の姿が…。
客室乗務員
「鼻と口を覆って姿勢を低くして下さい」
「荷物を取り出さないで下さい。ご協力お願いします」
荷物を取り出さないよう呼び掛けますが、座席上の収納棚はすでに開いているものも。また、懐中電灯を取り出し、通路にいた客を誘導する姿もありました。
ただ、機内ではこんなトラブルも…。
乗客
「途中で『機長、聞こえますか』という形で、それに対しては何の応答もなくて」
衝突直後から、乗務員同士の会話などに使用する連絡システムが使えなくなっていました。
乗っていたテレビ朝日関係者
「CA(客室乗務員)さんが叫んでいて、『エンジンが燃えています』って言ったら、白い方が『燃えているエンジンは何番ですか』って。(エンジンの)確認を2人でしていました」
白い服を着ていたのはチーフの客室乗務員で、エンジンの状況などを確認していたといいます。
■脱出のカギ“危険”見分ける力
元日本航空機長 小林宏之氏
「今回の成功の一つは最初にパニックコントロールできたこと、客室乗務員がお客様に。もし最初にパニックになってしまうと収拾がつかなくなってしまうので」
全員が無事に脱出できたことについて、日本航空の安全部門の現場のトップは「開けていいドアといけないドアを区別し、危険なドアを開けることなく脱出できたことが大きかった」としています。
全部で8カ所ある非常口のうち今回、開放されたのは前方2カ所と後方の1カ所。機内最後方にいた別の客室乗務員は、後方の非常口のうち右側は炎が見えたため開けられず、左側の非常口を自らの判断で開放して乗客を避難させたといいます。
元日本航空機長 小林宏之氏
「今回みたいに、最終的に機長と連絡がつかなくなった場合は、脱出あるいはどのドアを開けるか、客室乗務員が判断します」
機内の前方に乗っていた男性は…。
乗客
「非常事態なので緊張感はあったが、取り乱している感じではなかった」
乗客の命を救った乗務員の判断。非常口が開いた直後、小さかった炎はすぐに燃え広がりました。
機内に最後まで残ったのは機長でした。1列1列確認し、何名か残っていた乗客を移動させ、衝突から18分後の午後6時5分、全員の脱出を確認したということです。脱出後には、こんな証言も…。
乗客
「外で待っていた時、たまたま機長さんが『大丈夫ですか』とお声掛けしてくれて」
「急に白い影が出てきた」乗客が機長とみられる男性から衝突直後の様子を聞いていました。
■“奇跡の脱出”「急に白い影が」
放水による消火活動が行われるなか、機内から次々と逃げ出す乗客。撮影した女性は脱出後、機長とみられる男性とこんな話をしたといいます。
乗客
「家族が『どうしちゃったんですか?』って聞いたら、『急に横から小さな影が出てきた』って言っていた。『着陸態勢に入って、前方には何も視界を遮るものがなかった』。それで『その後の瞬間に急に白い影が出てきた』と言っていた」
日本航空などへの取材では、パイロット3人が着陸時に海上保安庁の航空機について、「視認できなかった」と話していることが分かったほか、「衝突直前に一瞬、何か横切ったような違和感を覚えた」と話すパイロットもいたということです。
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