自民党・安倍派の政治資金をめぐる問題で新証言です。パーティー券の売り上げは派閥を経由したキックバックだけではなく直接、議員の収入とする手法があると関係者が語りました。
■「パーティーは金稼ぎ」元関係者語る実態
「COP28」への出席を終え、ドバイから帰国した岸田総理。帰国前、ドバイで記者団から聞かれたのは…
Q.自民党・安倍派の政治資金問題について、所属議員に対するパーティー券の販売ノルマを超えた部分をキックバックして裏金としていたとの報道がありますが?
(岸田総理大臣)「まず現状それぞれの政治団体においては、既に政治資金収支報告書について訂正が必要な場合には訂正を行うと共に、丁寧に説明するよう党の幹事長に指示しており、引き続きしっかり対応をさせなければならないと思う。状況を把握しながら党としても対応を考えてまいります」
自民党最大派閥・安倍派の「清和政策研究会」の政治資金パーティーをめぐる問題。5年間で1億円以上、所属議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた金を派閥が議員側にキックバックし、それを収支報告書に記載せず“裏金”としていた疑惑です。さらに、5年間で合わせて1000万円を超えるキックバックを受けた議員が複数いるとみられることが分かりました。きょう3日、渦中の安倍派・生稲晃子議員に、パーティー券問題について聞くと…
(自民党 安倍派 生稲晃子参議院議員)「そのあたりのことがまだまだ自分が入って1年で分かっていませんので、申し訳ありません。これからもっと色々把握をして真摯に受け止めて私も議員らしく頑張って参りますので、よろしくお願いします」
自民党の石破元幹事長は、きのう2日、ABEMAの「NewsBAR橋下」に出演し、こう苦言を呈しました。
(自民党 石破茂元幹事長)「政治資金集めのふりをして個人の懐に金が入っていたとしたらやっぱりまずいよね。検察に立件される前に自浄作用として一番知っている派閥の責任者が『こういうことでした』ってことを言うべきなんじゃないですか。『全部明らかにします』ということを宣言して、それに違背することがあったら政治集団なんて解散したらいいんだよ」
取材を進めると、裏金づくりの手法には、これまでに明らかになっている“キックバック”とは異なる“別の手法”があることが分かりました。20年以上にわたってパーティー券を売りさばいてきたという自民党「清和政策研究会」所属議員の元関係者が実態を語りました。
(清和会所属国会議員の元関係者)「金稼ぎですよね。パーティーっていうのは。収益事業ですよ。昔はキックバックと言わなかったですよ。だって、バックにならないよ。キックしてないんだから。ノルマ以上に売れた分を振り込むなんて聞いたことないですよ。振り込めば記録に残るじゃないですか。面倒くさい手間をかけない」
派閥に所属する国会議員には当選回数や閣僚経験の有無などによって、1枚2万円のパーティー券を売るノルマが設定されています。議員のノルマが50枚・100万円の場合です。この関係者によれば、売れたかどうかにかかわらず、議員本人が派閥の口座にノルマの100万円全額を振り込むというのです。したがって、さばききれなければ、議員がその分を穴埋めすることになります。
Q.実際そういう経験は?
(元関係者)「何回もある。立候補して初当選した人は買ってくれる人がいないから議員自身が自腹を切る。(ノルマが)100万円ですよと言ったら売れようが売れまいが100万円払わないといけないから。だけど自信がない人で、売る能力、秘書も売れない、自分も売れない、有力の後援者がいない、その場合はとにかく金を作らないといけないから、中には2万円のパーティー券を頼むから1万円でいいから、1万円で買ってくれと。中には1枚5000円でもいいから買ってくれと、自分が弁償する金が減るから」
その一方で、ノルマを超えてパーティー券が売れると、その分だけ議員の“収入”になるのだといいます。実は議員たちはノルマ以上の枚数を派閥から受け取っていて、ノルマの金額を派閥に納めたあとは、派閥からのキックバックではなく、販売した金額が直接議員に入ることになります。これが収支報告書に記載されず“裏金”に利用されることがあるというのです。
(元関係者)「国会議員のパーティーは発行枚数、誰も知らないでしょ。一番小さいパーティーも(派閥の目標枚数の)倍は発行していますからね、2倍は。個人でパーティーを開くと、自分でホテル代払って、お土産代払って、ジュース・お酒代払うのだから金がかかるじゃないですか。党とか派閥のパーティーは、自分が金を払うわけじゃないですから、だから余分に(パーティー券を)もらうんですよ。売れなくたって何も害はないじゃないですか。売れれば儲けですよ、ノルマ以上に。自分の政治資金を貯めるにはパーティーは良い機会。パーティー券が売れない政治家で生き延びたやつはいませんよ」
Q.派閥のパーティー券を国会議員が一生懸命売るのはどうしてですか?
(元関係者)「派閥に所属して推薦してもらって党の役員につける。パーティー券を一枚も売れない人は党役員につけませんから。あと次の(選挙の)公認の問題がある。それともう一つは比例代表の順位がある。上位になれば当選するし、派閥でお金で貢献しなかったら下位にされる。次は当選できないじゃないですか。今回の問題はパーティー券を何枚、発行したかどこにも申告していないから」
■政治家の刑事責任 元特捜検事の見解は
2014年からおよそ3年、衆議員議員を務めた若狭勝氏。自民党に在籍していた際、パーティー券での裏金作りを何度も耳にしたといいます。
(元自民党 衆院議員 若狭勝氏)「『いっぱい売ったよ、いっぱい売ったから実入りが多くなった」という話は聞きました。(パーティー券を)売れば売るほどいっぱい頑張ったねと。派閥からの評価も高くなると共に、そうした実際のお金も自分のところに入ってくるっていうのは、そういう話は聞いたことはあります。政治資金パーティーは裏金作りの温床だと私は断言できます」
若狭氏はかつて、東京地検特捜部で日本歯科医師連盟による1億円闇献金事件をはじめ、特に政治資金をめぐる捜査に力を入れてきました。
(若狭勝氏)「特捜部の時、捜査していたイメージよりももっと実際は水面下においてはいろんなお金のごまかしがある。国会議員は裏金っていうのを一人ずつかなりの金額をキープしていると思います。そうしたちりも積もればもありますし、今回のパーティー券のいわばキックバックや何かも含めて、おそらく1人裏金として何百万から1000万、2000万の単位は、裏金を持っていると思います」
東京地検特捜部は立件を視野に調べているとみられます。捜査の手は、政治家まで及ぶのでしょうか…
(若狭勝氏)「所属議員の国会議員だけで単年度で3000万・4000万、仮に収支報告書の不記載があったとしてもそれは罰金止まりになってしまう。派閥側のもう少し大きな金額、しかもそこに政治家が収支報告書の不記載に関わっているようなことが証拠として蓄積できれば、その政治家側、派閥側の幹部、政治家側の刑事責任の追及はやはりやらなければいけない思いは特捜部として当然持つと思います。
今回の“裏金疑惑”のきっかけとなる刑事告発をした神戸学院大の上脇教授も、政治家の関与があったのかが焦点だと指摘します。
(刑事告発した神戸学院大学 上脇博之教授)「企業とか個人は収支報告制度がないので、これは全くチェックできませんのでもっともっと不記載がでてきて、裏金ももっと作られている可能性があると見ています。事務方だけが、もし政治資金規正法違反で問われるのであれば、これは不十分だろう。政治家のトップ判断がないと裏金作りはできないですから、ちゃんと国会議員まで責任を取るような捜査をして処分をしてほしいですね」
12月3日『サンデーステーション』より
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