炎に包まれ燃え盛る航空機。重大事故の発生で緊張に包まれた機内では、客室乗務員らによる決死の救出劇が展開されていた。東京・羽田空港で2日、着陸直後だった新千歳発羽田行の日本航空516便と、同空港のC滑走路から離陸しようとした海上保安庁所属の航空機が衝突し、両機ともに炎上した。日航機の乗客と乗員379人は全員が脱出したが、海保機の乗員6人のうち、脱出した機長を除く5人が犠牲となる大惨事となった。国の運輸安全委員会は事故調査を開始した。
一方で、炎が迫る過酷な状況にあって、炎上した日航機から乗客367人と乗員12人が脱出シューターを使用して、全員脱出したことが内外から大きな注目を集めた。衝突時、機内のインターホンが遮断された状況下、機長と連絡が取れなくなったため、客室乗務員は自らの判断で8カ所あるドアのうち、機体後方左側にあるドアを開け、乗客を脱出に導いた。奇跡とも言える緊迫の18分間にわたる脱出劇には、乗員乗客が90秒で避難することが求められる「90秒ルール」に対する乗務員の強い意識が背景にあったと指摘される。
過去の非常脱出が発生したケースでは、機外に脱出した際の着地点で、後続の乗客に突き飛ばされたり、他の乗客が持ち出したスーツケースに接触して負傷したりするなどのトラブルがあったと報告されている。また、携行品やハイヒールなどで脱出スライドが損傷すると、他の乗客が脱出不可能になるなどの危険が生じる。ロイター通信によると、事故機のエアバス「A350-900」は、炭素繊維複合材を主に使った表面構造を有する機体だった。従来のアルミニウムに比べて、大幅に軽い炭素繊維複合材を機体製造に採用した。軽量の炭素繊維複合材を使った同機は、難燃性に優れ、燃費効率の良さから燃費を大幅に節約し、また、機体を劣化させにくい特性があり、所有する航空会社は保守点検の負担が軽減される利点を受ける。
羽田空港で日本航空516便と海上保安庁の航空機が衝突・炎上した事故は、海保機乗員5人が死亡する惨事となった。国土交通省が3日に公表した管制と両機の交信記録からは、海保機が滑走路に誤進入した可能性があると見られている。交信は英語が使用されているが、国交省は日本語の仮訳も公表した。管制官は午後5時44分56秒、日航機に「滑走路34R着陸支障なし」と伝達し、着陸許可を出した。同45分11秒、海保機に「C5上の滑走路停止位置まで」と移動を指示している。海保機は同45分19秒に「1番目。ありがとう」と復唱したうえで、応じている。
羽田空港の衝突事故については今のところ、海上保安庁の航空機が、管制の指示を誤って認識したことが要因の一つと見られている。管制の指示を機長が誤解した事例は、過去に何度も起きている。2019年7月に那覇空港で「滑走路手前で待機」と指示された韓国のアシアナ航空機が滑走路に進入し、着陸態勢に入っていた日本トランスオーシャン航空機が着陸中止となった。2022年3月に熊本空港では、滑走路手前での待機を指示されたヘリコプターの機長が、滑走路上での待機を指示されたと誤認し、小型機が着陸やり直したといったケースが確認されている。
★ゲスト:塚原利夫(元日本航空機長)、江上いずみ(元日本航空客室乗務員)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/東海大学教授)
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