2030年度末の札幌延伸をめざす北海道新幹線。開業を見越した再開発が進む一方で、JRから切り離される地方交通は苦境を強いられています。
■北海道新幹線が札幌まで延伸すると、在来線はどうなる?
新函館北斗から札幌まで新幹線が延伸すると、並行して走る函館から小樽までの在来線はJRから経営が分離されます。函館~長万部間は北海道と本州を結ぶ貨物列車が通る物流の大動脈であることから鉄路を残す方向です。長万部~小樽間は、鉄道を残すと莫大な赤字が見込まれるとして、道と沿線自治体は鉄道を廃止し、バスに切り替えることで合意しました。
■バス転換に難色
バスに転換した後も現在のJRと同じ輸送量を確保するため、道は後志管内に新たに81本のバスを運行させる計画です。道は新たなバス路線を北海道中央バス、ニセコバス、道南バスの3社に担ってもらう考えです。しかしその協議が暗礁に乗り上げています。理由は「運転手不足」。後志管内の路線バスの運転手は283人(去年1月現在・道庁調べ)。前の年より10人減少しおよそ8割が50代以上です。今後、定年退職を迎えてさらに運転手が減ることが予想されています。そのためバス事業者は道の計画に難色を示しています。
道南バスはHTBの取材に「運転手不足で現状路線を維持するだけで手一杯。新規路線を運行するのは厳しい」、北海道中央バスは「運転手不足が深刻で単純に本数を増やすのは難しい」と答えています。
■鉄道を残せという声も
小樽駅から約25分の余市駅。小樽~余市間は通勤・通学の他に観光客も多く訪れ、利用度合いをしめす輸送密度は2000人(1㎞あたりの1日平均利用客数)を超えて決して少なくありません。町は廃止に合意していますが、前提条件のバス転換に暗雲が立ち込める事態に「余市駅を存続する会」の笹浪淳史会長は「バスが代替で運行できないとなると困ってしまうので、なんとか余市までは輸送密度も多いので、鉄道を残していただいて、それからバスを使うような複合的に活用していけたらと思います」と鉄道を残すよう訴えます。人手不足が、去年3月の合意に早くも影を落としています
■苦戦強いられる道南いさりび鉄道
2016年の北海道新幹線開業で並行在来線を残し、第3セクターが運行を始めた道南いさりび鉄道。JRから経営が分離された江差線の五稜郭駅から木古内駅までを第3セクターが引き継ぎました。開業当初から厳しい経営状況が予想されていましたが、毎年およそ2億円の赤字です。道と沿線自治体の函館市と北斗市、木古内町が補助金を出して補填しています。施設の老朽化も進み、道は安定した鉄道運行を継続するために、今年9月、1億1400万円の追加支援を決めました。こうした事態を改善しようとユニークなイベントも開催しています。11月には、あつあつのおでんを提供する「おでん列車」が運行されました。車内はほぼ満席の15人が乗車。社内でおでんや地元食材を使った海鮮丼をいただきながら、途中駅で買い物やジャズのライブを楽しみます。乗客からも「雰囲気がいいね」「地元が企画すると応援したくなりますよ」と好評です。ただ、こうした取り組みも目に見える形で利用客の増加には繋がっていません。膨らむ赤字を前に、道と沿線自治体はどのようにしていさ鉄を存続させるか今年度中に方向性をまとめる方針です。
■並行在来線をJRから経営分離する1990年に決めたルールが限界に
青森大学の櫛引素夫教授は「日本経済が低迷し、人口が減り始める中で、当時としては予測できなかった環境がさらに加速していく、そうした側面はおさえておく必要がありますよね」とした上で、道が地域ごとの実情を把握し、地域にそくした交通手段を示すべきだと指摘しますが、道からは具体策は聞こえてきません。
鈴木知事は11月2日の定例会見で「地域の皆様の暮らし、観光などで利用されるそういった方々の利用実態に応じたルートの検討などを通じて、将来にわたる安定的な交通体系の構築に向けては協議を進めていきたいというふうに考えています」と述べるにとどまっています。櫛引素夫教授は「どれだけの持ち出しを許容するか、お金だけじゃなくて、人が一番足りない、利用促進はどうするのか、事業所とどう連携する余地があるのか」「そこをおさえないで、足を守るということから始まってしまうと行き詰っちゃう気がするんですよね」と話します。
「鉄路を廃止してバス転換」というこれまでの図式に単純に落とし込めなくなったいま、新幹線開業後の住民の移動手段をどう守るのか、根本から考え直す時が来ています。
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