函館の海岸に漂着した大量のイワシをめぐって、処理水の放出を結びつける海外報道が拡散している。
水産庁が異例のコメントを出すなど、波紋が広がっている。
北海道・函館市の海岸に広がっていた驚きの光景。
人の膝ほどの高さで辺りを覆い尽くしているのは、おびただしい数のイワシやサバの死骸だった。
先週「イット!」でも取り上げた、この漂着騒動。
海岸には12日も、雪をかぶった状態で大量の魚が残されていた。
12日から重機を使った作業がスタートしたものの、函館市によると、1日40トンの魚を処理しても、打ち上げられたイワシの撤去には15日ほどかかるという。
その余波が続く中、思わぬ形で新たな波紋が広がっている。
きっかけとなったのは、イギリスの大衆紙デイリー・メールの報道だった。
デイリー・メールのSNSでは、今回のイワシ大量死と2023年8月から始まった福島第一原発の処理水放出を関連づけるかのような、根拠不明の報道がなされていた。
さらには、ニュースを伝えるにあたって、処理水を「核汚染水」と表現。
電子版の記事でも、中国や韓国が海洋放出に反対していたことや、処理水のリスクを指摘する団体の主張を含めて報道している。
根拠不明の臆測に満ちたこの動画は、これまでに150万回以上再生され、多数のコメントも寄せられている。
「核の魚だ」、「カモメすら放射能汚染された魚を食べない」など不安をあおるかのような声の一方で、「イワシの大量死は過去15年、何度も世界中で起きているじゃないか!」といった冷静な対応を呼びかける声も見受けられる。
処理水の放出当初、魚介類の輸入禁止や嫌がらせ電話など、一部で騒動に発展した中国では、イワシの大量死が確認されてから、SNSで処理水の放出と関係があるのではという動画が投稿された。
海洋問題の専門家は、今回のイワシ大量漂着と処理水放出には、まったく関係がないと明言する。
東海大学 海洋学部・山田吉彦教授「福島県の処理水が影響しているということは、まったく根拠が見当たらない理屈です。フェイクニュースですね」
処理水は、イワシの生態に影響を与えるものではないうえ、そもそも福島第一原発周辺の海水が函館周辺に流れ込むことは、海流の関係からまずあり得ないと指摘。
そのうえで、今回のイワシ漂着については...。
東海大学 海洋学部・山田吉彦教授「おそらく、イワシを捕食するブリですとか、マグロがイワシの群れに近づいてきたために、逃げ惑い、パニックを起こしてしまった」
今回のフェイク報道について、水産庁は「これらの情報は憂慮する事態で、処理水放出の影響はモニタリングで問題ないものとなっています。正しい情報の拡散に努めてまいります」とコメントしている。
FNNプライムオンライン
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