クマの頭の中、知能について見ていきます。イノシシのわなに掛かったクマは慣れた様子で柵に足を掛けていきます。人間さながらの姿に、専門家は「3歳から4歳の子どもと同じくらいの知能を持っている」と言います。
■クマが大脱出 軽々と柵越え…
イノシシを捕獲するためのわな。そこにやってきたのはツキノワグマです。今、イノシシのわなにクマが掛かるケースが相次いでいます。
体長が1メートルを超える大きなツキノワグマ。すると、目を疑う光景が…。檻(おり)から顔を出しています。後ろ足を檻に掛けると大きな体を持ち上げ、抜け出そうとしています。
映像はここで途切れますが、クマは何事もなかったかのように森へ帰っていきました。このツキノワグマの脱出劇をひも解くことで、驚異の身体能力とその学習能力が明らかになりました。
■クマが食い逃げ?ワナにかかるも…
立山町 農林課 大崎喜孝係長:「あちらがイノシシ用のわな」
同じタイプのわなを見てみると、餌(えさ)を取ろうとしてワイヤに足などを引っ掛けると扉が閉まる仕掛けです。わなの上部には穴がぽっかり開いていました。このわなはイノシシの捕獲のために許可を取って設置しているため、クマを捕獲してはいけません。あえて脱出用の穴が設けられていました。
しかし、その穴を逆手に取ったのか、慣れた様子で餌だけ食べて出ていくクマが目立つといいます。実は翌日も再び同じ場所にクマが現れていました。
富山県でも…。
立山町 農林課 大崎喜孝係長:「今年の春から3から4回、檻にクマが入って出た痕跡」
「このわなは危険なものではない」と学習している可能性があるといいます。
■“ワナ”にかからないクマ 次々と
映像を撮影したのは福島市で野生生物による農業被害軽減に取り組む丹野さん。他の映像を見せてもらうと…。
農業被害軽減に取り組む丹野一好さん:「これ落ちるよ、中に子グマが入って」
子グマが穴を通ってわなの外へ。さらに親グマも逃げ出します。
農業被害軽減に取り組む丹野一好さん:「慣れちゃっている。これが一番困る。困るのは農家の人。いつまでもイノシシが取れない、クマがここにいるから」
■「4歳くらいの知能」学習した?
さらに、わなを作動すらさせない学習能力に長けたクマの存在も…。
立山町 農林課 大崎喜孝係長:「何年も檻に出入りしているようなクマだと、奥の方を食べたらシャッターが閉まるというのを覚えてくるんじゃないかという気はする。クマの足跡があってもシャッターが下りていないこともある」
仙台市で撮影されたクマも檻の仕組みを理解し、扉が閉じるスイッチであるワイヤの場所を把握している可能性があるといいます。扉は開いたまま、クマは悠々と森に戻りました。
その知能について、普段クマと対峙(たいじ)している猟友会の会員に聞いてみると…。
宮城県 猟友会会員:「(クマは)知能的に(人間の)3歳、4歳くらいと言うが、生きることに対してはすごく頭がいい。例えば自分のすみか(巣)に寝ようと思うと、真っ直ぐ歩いていって巣を通り越して必ず戻る、足跡の通りに。(そして)2から3メートル横に飛ぶ。そうすると追い掛けていた人は分からなくなる」
クマは巣穴を探られないように来た道の足跡を踏んでカモフラージュしているといいます。さらに冬眠期間中は、こんな場所に注意が必要です。クマが眠りに就く場所、そこには共通点がありました。
■大きな木に注意 寝床に共通点
北海道知床半島。餌取りの場面でもクマの高い学習能力が発揮されている可能性があります。
水辺を移動する親子のヒグマ。他のヒグマもうろつくなか、餌を探しています。すると水の中へ。やっとのことで魚を仕留めました。今年はサケやマスが減少傾向。横取りされることを学習しているのでしょうか。魚をどこかに持ち去っていきました。
毎年、知床を訪れる撮影者は普段、魚が多い時はその場で食べ、すぐに次の獲物を狙うと話します。激しい餌取り合戦が一段落し、クマが冬眠に就くのはいつなのでしょうか。専門家は…。
北海道野生動物研究所 門崎允昭所長:「(冬眠は)早くて11月20日ごろから、遅くても12月30日には入る」
一体どんな場所で眠りに就くのでしょうか。
北海道野生動物研究所 門崎允昭所長:「必ず斜面に横穴を掘る。平坦(へいたん)地には絶対作らない。木が生えているような場所。木が生えていると根が張っているので安定する。穴の天井が落ちない」
木の根っこの下は安全と学習。さらに…。
北海道野生動物研究所 門崎允昭所長:「大抵、クマは穴を2カ所以上、知っている。不本意に使っていた穴を出たりすると、別の穴に行って掘って入っていく」
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